できるようになること
30分後の状態:
- Claude in Excelのインストールが完了している
- 手持ちのExcelファイルを読み込ませて「このシートの構造を説明して」と聞ける
- 数式エラーがあれば、原因と修正案をClaude側から提示される状態になっている
45分後の状態:
- 「売上が20%減ったら?」のようなシナリオシミュレーションシートを、プロンプト1つで作成できている
- 来期の予算計画シートが、条件付き書式付きで完成している
- Claude in Excelが自分の業務に合うかどうか、判断がついている
最終アウトプット
フリーランスのWeb制作会社(一人会社)を想定し、以下の作業をClaude in Excelで実行した。
- 月次売上・経費管理シート(3タブ構成)の全体把握
- 数式エラーの検出と修正(#DIV/0!、無音エラー含む)
- 入金ステータス別の売上分析、経費カテゴリ別の内訳分析
- 売上20%減少時のシミュレーションシート作成
- 来期予算計画シートの自動生成(条件付き書式付き)


結論
先に結論を書く。Claude in Excelは、月$20(Proプラン)で使える「Excel専属アシスタント」として、少人数の会社やフリーランスにとって実用的なツールだ。
向いている人:
- Excelで月次管理や予算管理をしているが、数式の構築・修正に時間を取られている人
- 「数字はあるが、分析に手が回らない」状態の人
- 新しいシートをゼロから作るたびに、構成を考えるところから始めている人
向いていない人:
- すでにExcelマクロやVBAで高度に自動化している人(記事作成時点ではマクロは未対応)
- 機密性の高い財務データを扱っていて、クラウドへのデータ送信に制約がある人
- Googleスプレッドシートがメインの人。
(Claude in Excelは、Excelデスクトップ版限定。ただし、claude.aiのチャット上でCSVやスプレッドシートのデータを貼り付けて分析・生成させてスプレッドシートにインポートは可能)
ツールとしての評価:
数式の理解力と修正精度が高く、特にSUMPRODUCTのような複雑な配列数式でも正確に動作した。シート作成の品質も、ヘッダーの色分け、条件付き書式、数式の構造まで含めて「そのまま使えるレベル」だった。
ただし、これは単なるExcelの効率化ツールではない。「作る」という作業そのものがAIに移行し、人間の仕事は「何を作るか考える」と「出来上がったものを確認する」に集約される。その転換点を実感できるツールだと考える。
注意点として、Claude in Excelの利用はClaudeアカウントの通常の使用量制限に含まれる。Proプランの場合、長時間の連続作業ではメッセージ上限に達する可能性がある。今回の検証(5ステップ、約40分)では上限に達しなかったが、1日中Excelで作業するような使い方を想定している場合は、Maxプラン($100/月)も選択肢に入る。
具体的な使用方法と手順
インストール
まずは、初回だけの人間の作業がある。
- Microsoft MarketplaceのClaude in Excelページにアクセス
- 「今すぐ入手」をクリックしてアドインをインストール
- Excelを開き、アドインをアクティブにする
- Claudeアカウントでサインイン

ショートカットキーでサイドバーを開ける。Macは Control + Option + C、Windowsは Control + Alt + C。
なお、Claude in Excelではセッション間のチャット履歴は保持されない。Excelを閉じて再度開くと、前回の会話は消えている。長いやり取りの途中で中断する場合は、途中経過をメモしておくといい。
シートの全体把握
まずは、すでに存在しているエクセルファイルを開いて、その内容の理解をClaudeにさせる。
役割分担:
| 人間 | AI |
| ファイルを開いてプロンプトを投げる | ワークブック全体を読み取り、構造を説明する |
使用プロンプト:
このワークブックの構成を説明してください。
各シートにどんなデータが入っていて、シート間でどのような関係がありますか?

Claudeは3つのタブの構成、各列の内容、シート間の数式依存関係を正確に把握した。売上一覧・経費一覧からSUMPRODUCT関数で月次サマリーに集計されている構造を、セル参照付きで説明してくれる。
注目すべきは、この時点でエラーも自動検出した点だ。聞いてもいないのに「B9に#N/Aエラーがある」「E7に#DIV/0!エラーがある」と報告してきた。
引き継いだExcelファイルや、久しぶりに開いた自作ファイルの「今どうなっているか」を把握するだけでも価値がある。数式の依存関係を人間が目視で追う時間がゼロになる。
エラーの発見と修正
次に、エラーのある関数を修正していく。
役割分担:
| 人間 | AI |
| エラー修正を依頼する。修正結果を確認する | エラーの原因分析、波及範囲の特定、修正の実行 |
使用プロンプト(1回目):
月次サマリーシートにエラーがあるようです。
すべてのエラーを見つけて、原因と修正案を教えてください。

Claudeは2つの根本原因と、そこから波及した計7セルのエラーを特定した。
エラー1:配列サイズの不一致(B9セル)
12月の売上合計を計算するSUMPRODUCT関数で、第1引数がA2:A10(9行)、第2引数がD2:D15(14行)と配列サイズが不一致になっていた。他の月はすべてA2:A15で揃っている。このエラーは表面上#N/Aを返すが、場合によっては0を返して「見た目上は正常に見えるが値が間違っている」という最もタチの悪いパターンになるが問題なく修正。
修正案:=SUMPRODUCT((MONTH(売上一覧!A2:A15)=12)*(売上一覧!D2:D15))
エラー2:誤ったセル参照(E7セル)
10月の利益率の数式が=D7/G7になっていた。正しくは=D7/B7。G7は空セルなので0除算が発生し、#DIV/0!エラーになっている。
他の月はすべて=D○/B○のパターンなので、この1セルだけがずれていることもClaudeは指摘した。
修正案:=D7/B7

使用プロンプト(2回目):
その修正を適用してください。他の数式に影響が出ないか確認もお願いします。
2箇所の修正だけで、波及していた5セルのエラーもすべて自動的に解消された。
Claudeは修正前後の値の変化を一覧で示し、「7〜11月の既存データには影響がない」ことも明示してくれた。
セル修正内容修正後の値B9(12月売上合計)配列範囲をA2:A15に統一¥400,000E7(10月利益率)参照先をB7に修正75.7%

「見た目上は正常だが値が間違っている」エラーを検出できるのは、人間の目視チェックに対する明確な優位性だ。
特にSUMPRODUCTのような配列数式は、範囲のズレが無音で発生しやすい。ここはClaude in Excelの真価が出る場面だと感じた。
データの質問と分析
ここからが本題だ。シートを「作る」のではなく、既存のデータに「聞く」。
役割分担:
| 人間 | AI |
| 知りたいことを自然言語で聞く | データを集計・分析し、結果と洞察を返す |
使用プロンプト(1回目):
入金済みの案件だけで、月別の売上推移を教えてください。
一番売上が高かった月と、その内訳も知りたいです。

入金済み案件のみで月別集計を実行。最高売上は9月の¥850,000で、内訳はECサイト構築(¥800,000)とサイト保守(¥50,000)の2件。
「9月の売上の94%は1件の大型案件が占めている」「請求中の案件(¥320,000)が入金されればさらに伸びる」といった補足もあった。
使用プロンプト(2回目):
経費のカテゴリ別の割合を出してください。
一番コストがかかっているカテゴリはどれですか?

経費合計¥437,580のうち、外注費が¥320,000(73.1%)で圧倒的に大きいことを即座に回答。
さらに外注費の内訳(4件の明細)と、「ノヴァ案件は外注費¥150,000に対して売上¥800,000なので粗利¥650,000」という収益性の分析まで出てきた。
これは新しいシートを「作って」いるわけではない。既存のデータに対して「聞いている」だけだ。
従来なら、フィルターをかけて、SUMIFSを書いて、別のセルに集計して——という手順を踏んでいた作業が、チャットの1往復で終わる。
数字を見て「あの数値の意味は?」と思った瞬間に、答えが返ってくる。
シナリオシミュレーション
「もし売上が20%落ちたら?」——この問いに、Excelで答えを出すには通常どれくらいかかるか。Claude in Excelなら、聞くだけでいい。
役割分担:
| 人間 | AI |
| シナリオの条件を指定する | シートの作成・数式の構築・結果の要約 |
使用プロンプト(1回目):
来月から外注費が月5万円増える想定です。
1月〜3月の経費一覧に外注費を追加して、月次サマリーに反映してください。
利益率がどう変わるかも教えてください。

経費一覧に3行追加し、月次サマリーの集計範囲と合計行の数式も自動で更新。
利益率が87.3%→83.0%に低下することを報告。「1〜3月に売上が入れば改善される」という補足もあった。
使用プロンプト(2回目):
もし来期の売上が全体で20%減少した場合、
月次サマリーはどうなりますか?シミュレーション用のシートを新しく作ってください。

「売上減少シミュレーション」という新規シートが作成された。構成は以下の通り。
- 前提条件セル(売上変動率:-20%)を黄色背景・青文字で配置。この値を変えるとシート全体が連動する
- 月別の実績とシミュレーション値を並列表示
- 下部にサマリー比較(実績 vs シミュレーション vs 差分)

売上20%減で利益率は83.0%→78.7%に低下(4.3ポイント悪化)。経費は固定なので、売上減がそのまま利益減に直結する構造も可視化された。
「もし〜だったら」というシナリオを、自然言語で指定するだけで完成形のシートが出てくる。変動率セルを別にして連動させる設計判断も、Claude側が自動で行っている。
新規シートの構築
最後に、何もないところからシートを作る。これがClaude in Excelの最も派手な使い方だ。
役割分担:
| 人間 | AI |
| 要件を伝える | シートの設計・構築・書式設定をすべて実行 |
使用プロンプト:
来期(1月〜6月)の予算計画シートを新しく作ってください。
条件:
- 月別の売上目標、経費予算、利益目標を設定
- 売上目標は前期実績の10%増をベースに
- 経費予算は前期実績の平均値をベースに
- 実績との差異を入れる列も用意
- 条件付き書式で、目標未達の月は赤くハイライト

Claudeはまず前期実績(7〜12月)の月別データを確認し、作成プランを提示した。構成は以下の通り。
- 売上:目標 / 実績(入力欄)/ 差異
- 経費:予算 / 実績(入力欄)/ 差異
- 利益:目標 / 実績 / 差異
- 条件付き書式:目標未達は赤、達成は緑
- 実績入力欄は黄色背景で「ここに入力する」とわかる設計
作成シートに問題がなければ、「これで作成して」と指示。
来期の予算サマリー:売上目標¥3,795,000(前期比+10%)、経費予算¥437,580(前期平均¥72,930/月×6)、利益目標¥3,357,420。実績列に数字を入れると、差異と色分けが自動で反映される。毎月の運用がそのまま始められる状態で納品された。

「前期実績の10%増」「前期平均値ベース」といった指示を、Claudeは既存シートのデータを参照して正確に計算した。人間がやったのは要件を5行書いただけだ。
評価

編集者あとがき
正直に書く。
今回の検証で一番印象に残ったのは、「Excelを操作した時間がほぼゼロだった」という事実だ。
これまでExcelで何かを作るとき、暗黙のフローがあった。「何を作るか考える」→「Excelで作る」→「調整する」→「完成」→「運用する」。このうち「Excelで作る」「調整する」が作業時間の大部分を占めていた。数式を組む、エラーを直す、見た目を整える。
Claude in Excelを使うと、この2つの工程がほぼ消える。残るのは「何を作るか考える」と「出来上がったものを確認する」だけだ。
これは効率が上がったという話ではない。仕事の構造が変わったという話だ。
もうひとつ。ステップ3のデータ分析で気づいたことがある。数字を見て「あの数値の意味は?」と思い、それを調べるためにフィルターをかけて、SUMIFSを書いて、30分とか1時間かけてExcelを操作する。その時間、「仕事をしている」感覚はあるだろう。しかしClaude in Excelに聞けば、同じ答えが数秒で返ってくる。
Excelを操作していることが仕事ではない。数字から判断を下すことが仕事だ。この区別が、ツールの進化によって否応なく突きつけられる。
セキュリティについても触れておく。Claude in Excelはクラウドにデータを送信して処理する。外部から受け取ったスプレッドシートには、プロンプトインジェクション(AIに悪意ある指示を埋め込む攻撃)のリスクがある。
信頼できるファイルのみで使うこと、クライアント向けの最終成果物は必ず人間の目で確認すること。この2点は守るべきだ。
最後に。人件費か、AIのサブスク料か。この天秤で仕事が測られる時代が、Excelという身近な場所にまで来ている。
エクセルでデータが作れている状態は「当たり前」になり、クオリティが高くても評価されることはないが、低くてマイナスにはなる。そういう世界だ。
ではこの先、人間は何をするのか。思考すること。一次情報を取ること。リアルの世界で動くこと。感情を扱うこと。数字やコンピューターでは表現しきれない領域に、人間の仕事はシフトしていく。
Claude in Excelは、その変化の入り口にあるツールだと考える。
こちらもおすすめ
ニュースを消費せず、思考に変える習慣。
一人の限界を超えるための、テックメディア。



























