プロセス・ロス

分野:組織

4人の力を足し上げた見込みの棒より、集団の実際の出来の棒は低く、その差が損失として残る絵

集団で仕事をすると、実際の出来は、メンバーの力を足し上げた見込みに届かないことが多い。

この差を過程の損失(プロセス・ロス)と呼ぶ。

損失は、互いの動きを調整する手間(調整の損失)と、やる気の低下(動機づけの損失)から生まれる。

見込める出来と損失の大きさは、メンバーの力と、仕事を分けられるかなどの仕事の性質で変わる。

3つの例で見る

3つとも同じ骨組みです。人を足すほど、1人分を足し上げた見込みは伸びますが、実際の出来は調整の手間などの分だけ届かず、その差が広がります。

仕組み

集団の実際の出来は、メンバーの力を足し上げた見込みから、過程の損失を引いたものになります。損失は、互いの動きを調整する手間と、やる気の低下から生まれます。人を足すほど見込みは伸びますが、手間も増えるので、実際の出来は人数の分だけは伸びません。

人を足すと、見込みと実際の出来はどうずれるか。人数を1人から6人へ増やすと、1人分を足し上げた見込みの枠は人数の分だけ伸びるが、実際の出来の帯はそこまで伸びず、その差(過程の損失)が広がる図。概念図で、数値ではありません。Ivan D. Steiner『Group Process and Productivity』(1972年)の、集団の出来の考え方を図にしたものです。

身近な例え

例えです。狭い台所で夕食を作るとき、人が増えるほど手は増えます。それでも包丁やコンロの取り合いと声かけが増えるので、6人いても6人分の速さにはなりません。

狭い台所で、料理する人を増やしたら。台所に立つ人を増やすと、1人分の速さを足した見込みは伸びるが、道具の取り合いと声かけで実際の進みは届かず、差が広がる図。身近な場面に置きかえた例えの概念図です。特定の家庭や実際の出来事ではなく、数値もありません。

研究の例

Ringelmann は、綱を1人で引く力と集団で引く力を測り、人数が増えるほど1人あたりの力が落ちることを報告しました(1913年)。後の Ingham ほかの実験(1974年)で、落ち込みの多くは、息の合わなさよりやる気の低下によると分かりました。

綱を引く人を増やすと、力の合計はどうなったか。綱を引く人を増やすと、1人ずつの力を足した見込みに、集団で引いた力が届かず、差が広がる図。後の実験で、差の多くはやる気の低下によると分かった。Ringelmann(1913年)と Ingham ほか(1974年)が報告した結果の向きを示す概念図です。人数と力の大きさは、元の研究の数値ではありません。

今の AI の例は、下の「この概念・法則でニュースを読む」の記事で読めます。

この概念・法則でニュースを読む

AIを何体組ませても、出来ばえは足し算にならない

なぜ?AIを組ませると費用は最大5.1倍に増えるのに、なぜ出来ばえはほとんど上がらないのか

この記事からわかることAIを足すのは相談なしで分けられて急ぐ仕事だけにし、分けにくい文章や判断は1体に任せる

どんなときに当てはまるか

複数の人や機械が1つの仕事を一緒に進め、互いの出力を受け渡したり取りまとめたりする必要があるときに起きる。分けにくい仕事や、取りまとめに手間のかかる仕事ほど大きくなる。

見分ける手がかり

人数や台数を増やしても、出来が数の分だけ伸びない。打ち合わせ・受け渡し・重なりの取り除きなど、すり合わせの作業が増えている。

使うときに気をつけたいこと

人や機械を足すことを否定する根拠にしない。分けやすい仕事では、足した分だけ速く進む。綱引きの研究の落ち込みは多くがやる気の低下によるもので(Ingham ほか、1974年)、やる気の落ちないAIの組に、人の集団の数字をそのまま当てはめない。

この概念・法則の出典と記録

最初に観測した日
2026-10-12
出典
Ivan D. Steiner『Group Process and Productivity』(Academic Press、1972年)