AIエージェントは、1体で仕事を進めるだけでなく、何体かを組ませて手分けさせることもできます。評価を手がけるVals AIは、GPT-6 SolとClaude Opus 5.5を、1体で動かす場合と組ませて動かす場合で、同じ試験の点と費用を比べました。米メディアTHE DECODERが、その結果と、ほかの研究者の見方を伝えています。

この記事の要点

  • AIを組ませると、費用は最大5.1倍、点はほぼ上がらない
  • 研究者は、組ませて買えるのは主に速さだと話す
  • 足した数の分、すり合わせの手間も増える
  • 足すのは、相談なしで分けられる仕事だけにする

組ませると、費用と出来ばえはどう変わったか。AIを1体で動かす場合と組ませる場合の比較。組ませると費用は1.8〜5.1倍になり、4通りの比べ方のうち点がはっきり上がったのは、考える量を中程度にしたGPT-6 Solの1つだけ。数字は THE DECODER(2026年10月11日)が伝えた Vals AI の試験(Vibe Code Bench)の結果です。GPT-6 Sol と Claude Opus 5.5 を、考える量の2段階で比べています。

AIを組ませた費用は最大5.1倍、点はほとんど上がらない

THE DECODERによると、評価を手がけるVals AIは、GPT-6 SolとClaude Opus 5.5を、1体で動かす場合と組ませて動かす場合で比べました。試験はVibe Code Benchで、考える量を中程度と最大の2段階にしています。

比べたこと 結果
組ませたときの費用(1体と比べて) 1.8〜5.1倍
4通りの比べ方で、点がはっきり上がったもの 1つ(考える量が中程度のGPT-6 Solで7.3点)
考える量を最大にしたときの組ませた利点 どちらのモデルもほぼ無い

AnthropicもOpus 5.5を使った自社の2つの試験で、組ませる数を増やすほど質の伸びが小さくなるのを見ています。24時間後の点は、10体から100体に増やしてもわずかに上がっただけでした。

OpenAIの研究者Noam Brown氏は、複数のエージェントで買えるのは主に速さで、質ではないと話しました。4体にすると2倍速く解けたものの、費用も2倍かかったといいます。ウェブの調べものや数学は分けやすい一方、小説を書くことは分けにくいとも述べています。

OpenAIの開発者Eric Provencher氏は、エージェント同士のすり合わせが崩れるため、大勢を走らせるのはおそらくお金の無駄だと注意を促しました。この負担を「調整の税」と呼んでいます。

費用は足した分だけ増えるのに、なぜ出来ばえは増えないのか

餃子を100個包むなら、10人で囲めばすぐに終わります。けれど、タレの味を10人で相談して決めても、おいしさは10人分になりません。人が増えるほど、意見をまとめる手間が増えます。

Vals AIの試験で起きたのも、似た食い違いです。組ませると費用は大きく増えたのに、点はほとんど動きませんでした。費用は数を足すほど増えるのに、出来ばえは足し算になっていません。

頭数を足すほど、すり合わせの手間が出来を下げる

4人の力を足し上げた見込みの棒より、集団の実際の出来の棒は低く、その差が損失として残る絵
プロセス・ロスのイメージ

当てはまるのは、社会心理学者のIvan Steinerが1972年の著書で示したプロセス・ロス(過程の損失)です。

集団の実際の出来は、メンバーの力を足し上げた見込みから、過程の損失を引いたものになります。損失は、互いの動きを調整する手間と、やる気の低下から生まれ、その大きさは仕事の性質で変わります。

AIのエージェントに、やる気の低下は当てはまりません。残るのは調整の側の損失で、Provencher氏の言う調整の税がこれにあたります。Brown氏が挙げた調べものと小説の分けやすさの違いは、Steinerが損失の大きさを左右するとした、仕事の性質の違いです。

費用は数で増え、上乗せは持ち寄る力と仕事の分けやすさで決まる

報道は、Vals AIの試験で1組に何体をどう組ませたかと、点がほとんど伸びなかった理由を伝えていません。Steinerの見方に照らすと、理由は2つ考えられます。

  • 持ち寄る力:同じモデルどうしなら、力の種類は増えない
  • 分けやすさ:分けにくい仕事ほど、すり合わせが増える

最大まで考えさせたときに組ませた利点がほぼ無かったことは、1つ目と合います。1体がすでに力を出し切っていれば、同じモデルを足しても上乗せの元が生まれにくいと考えます。

費用は足した数で増えますが、上乗せは、持ち寄る力と仕事の分けやすさで決まります。

AIを足す前に、相談なしで分けられる仕事かを見る

私の会社でも10月9日に、公開情報の調べものを業務ごとに3つのAIへ分けて集めさせました。調べものは分けやすい仕事ですが、2つの担当が同じ出典の同じ事実を拾った重なりが6件あり、取りまとめ役のAIが87件を全部読んで外しました。

分けやすい仕事でも、取りまとめの手間は残ります。足す前に次の順で決めると、払う費用と得るものがずれにくくなります。

  1. 頼む仕事を、相談なしで進む塊に分けられるかを書き出す
  2. 分けられて急ぐ仕事だけ、塊ごとにAIを足す
  3. 分けにくい文章や判断は、足さずに1体に任せる
  4. 分けたら、1か所で全部を読み、重なりと抜けを外す

読み解きに使った概念・法則

この記事の中心となる概念・法則

プロセス・ロス

集団で仕事をすると、実際の出来は、メンバーの力を足し上げた見込みに届かないことが多い。

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なべ

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なべ

テクノロジーは好きですが、そのものを作る側ではありません。かといって、新しい道具を集めて満足するほうでもない。

何か新しいものが出てきたとき、私が考えるのは「これで何ができるか」より「今のやり方このままでいいんだっけ」のほう。道具が増えるより、やり方ごと作り変えたり、無くしたりするほうが好きです。

AIが来て、人の考え方も、仕事の進め方も変わっています。その変わり方に興味があって自分の仕事で先に試しています。techtech.clubは、そのやってみた結果を置いておく場所です。

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