ジェボンズのパラドックス

資源を効率よく使える技術が出て、1回あたりに使う量が減ると、資源を使う総量はかえって増えることがある、という考え方。
経済学者のJevonsが1865年の『The Coal Question』で、ワットの改良で燃費が良くなった蒸気機関が多くの産業に広がり、イングランドの石炭の消費が増えたことから論じた。
効率が上がると使う費用が下がり、それまで割に合わなかった使い道まで広がるためである。
使う量の増え方が、節約された分を上回ったときに起きる。
3つの例で見る
3つとも同じ骨組みです。1回に使う量が減っても、使う回数がそれ以上に増えると、使う総量は前より増えます。四角の面積が総量で、点線が前の総量です。
仕組み
資源を効率よく使えるようになると、1回に使う量が減り、使う費用も下がります。安くなったことで、それまで割に合わなかった使い道まで広がると、使う回数が大きく増えます。回数の増え方が節約の分を上回ると、使う総量は前より増えます。
1回の量が減ると、使う総量はどうなるか。縦が1回に使う量、横が使う回数の四角。1回の量が半分になると四角の高さが縮み、使い道が広がると横に大きく伸びて、オレンジの四角が点線の前の総量を超える概念図。概念図で、数値ではありません。ジェボンズの『The Coal Question』(1865年)で知られる考え方を、1回の量と回数の四角に置きかえたものです。
身近な例え
例え話です。燃費のいい車に買い替えると、同じ距離を走る燃料は減ります。それで気軽に遠出をするようになり、走る距離が大きく伸びると、月に使う燃料は前より多くなります。
燃費のいい車にすると、月の燃料はどうなるか。縦が走る距離あたりの燃料、横が月に走る距離の四角。燃費のいい車で高さが縮み、遠出が増えて横に大きく伸びると、オレンジの四角が点線の前の燃料を超える例え話の概念図。例え話の概念図で、数値ではありません。燃費のいい車に替えて、遠出が増えた場面に置きかえたものです。
歴史の例
Jevonsは1865年の『The Coal Question』で、ワットの改良で燃費が良くなった蒸気機関が多くの産業に広がり、イングランドの石炭の消費がかえって増えたと論じました。燃料の節約が消費を減らすと考えるのは考え違いだと書いています。どこまで広く当てはまるかは、経済学者の間で意見が分かれています。
蒸気機関の燃費が上がると、石炭は減ったか。縦が仕事あたりの石炭、横が蒸気機関の使い道の四角。ワットの改良で高さが縮み、使い道が多くの産業に広がって横に大きく伸びると、オレンジの四角が点線の前の消費を超える概念図。概念図で、数値ではありません。ジェボンズの『The Coal Question』(1865年)の、ワットの改良のあと蒸気機関が多くの産業に広がり、イングランドの石炭の消費が増えたという指摘を置きかえたものです。
今の AI の例は、下の「この概念・法則でニュースを読む」の記事で読めます。
この概念・法則でニュースを読む
AIの単価が下がるほど、重い使い方が増えて費用は上がる
なぜ?トークンの単価は下がっているのに、なぜエージェントに任せる仕事1件あたりの費用は、2028年までに5倍を超えて増えると予測されるのか
この記事からわかることAIの費用を単価で見ず、月の費用を片付いた仕事の件数で割って替える前と並べ、件数の伸びが費用の伸びに届かないなら決まった仕事を安いモデルに戻し、使う量に上限を置く
どんなときに当てはまるか
効率が上がった分、使う人が払う値段が実際に下がり、値段が下がると使う量が大きく増える(需要が値段によく反応する)ときに起きる。高くて手が出なかった使い道が、安くなって新しく開けるときに起きやすい。
見分ける手がかり
1回あたりの量や単価は下がっているのに、月の総額や総量が増えている。安くなったのを機に、前はやらなかった重い使い方や新しい使い道が増えている。
使うときに気をつけたいこと
効率を上げれば必ず総量が増える、という法則ではない。多くの場面では、使う量の増えは節約の一部を取り戻すだけで、総量は減る。先進国の石油のような成熟した市場では増えは小さいとされ、どこまで広く当てはまるかは、実証の裏付けが限られていると指摘されている。
この概念・法則の出典と記録
- 最初に観測した日
- 2026-10-17
- 出典
- William Stanley Jevons『The Coal Question』(1865年)