AIを動かす費用は、AIが扱う文字の単位であるトークンの量と単価で決まります。VentureBeatによると、Gartnerは、トークンの単価が下がる中でも、AIエージェント(指示を受けて作業を自分で進めるAI)の仕事1件あたりの費用は、2028年までに5倍を超えて増えると予測しました。
この記事の要点
- トークンの単価は下がるのに、エージェントの仕事1件の費用は5倍超へ
- 安くなった分だけ重い使い方が増える、ジェボンズのパラドックス
- AIの費用は、単価ではなく片付いた仕事1件あたりで見る
単価が下がっても、仕事1件の費用が増える仕組み。上から1トークンの単価、仕事1件で使うトークン、仕事1件の費用の棒が並ぶ。単価の棒が縮むと費用の棒も縮むが、使うトークンの棒が大きく伸び、単価の棒も少し伸びると、オレンジの費用の棒は対話型AIのときの点線を大きく超える模型。模型です。VentureBeatが伝えたGartnerの説明(エージェントは同じ仕事に対話型AIの5〜30倍のトークンを使う、開発各社は1トークンあたりが高い次の世代のモデルに投資している)を棒に置きかえたもので、棒の長さは数値ではありません。
トークンの単価は下がり、エージェントの費用は5倍超へ
VentureBeatによると、Gartnerは、エージェントの仕事1件あたりのAIを動かす費用が、2028年までに5倍を超えて増えると予測しました。トークンの経済性が良くなる中での予測です。
エージェント向けの推論モデルに仕事を回すと、基本的な対話型AIとのやり取りに比べて、提供元のAIを動かす費用は少なくとも5倍になり、複雑な仕事ほどさらに増えることが多いとしています。Gartnerはこれを「推論のパラドックス」と呼び、記事は主な要因を次の2つに挙げています。
| 要因 | 中身 |
|---|---|
| 開発各社 | 安く作れるようになった分を貯めず、1トークンあたりが高い次の世代のモデルに投資 |
| 使う量 | 効率が上がって複雑な仕事が実用になり、その仕事がはるかに多くのトークンを使う |
記事は、周りに遅れまいとする競争が、この2つを結びつけているとしています。GartnerのアナリストのWill Sommer氏は、エージェントは同じ仕事に、基本的な対話型AIの5〜30倍のトークンを使うと述べています。
トークンが安くなったのに、なぜAIの費用は増えるのか
燃費のいい車に買い替えると、同じ距離を走るガソリン代は下がります。それで遠出が多くなると、月のガソリン代はかえって増えることがあります。
多くの企業は、トークンの値下がりとともにAIの費用も下がると見込んできました。記事は、エージェントがその見込みを崩しているとしています。単価が下がったのに、なぜ払うお金は増えていくのか。
燃料を節約する技術が、かえって燃料の消費を増やす

このニュースで説明したいのは、トークンが安くなった分を、使う量の増え方が上回っている点です。経済学者のジェボンズは1865年の『The Coal Question』で、同じ形を石炭について論じました。
ワットの改良で蒸気機関の燃費が良くなると、安く動かせる蒸気機関が多くの産業に広がり、イングランドの石炭の消費はかえって大きく増えました。この現象は、ジェボンズのパラドックスと呼ばれます。
燃料を節約して使うことが、消費を減らすことと同じだと考えるのは考え違いだ。真実はまったく逆である(Jevons、1865年)。
起きるのは、安くなったことで使う量が大きく増えるときです。このニュースでは、安くなったのはトークンで、増えたのは、複雑な仕事をエージェントに任せる使い方です。同じ仕事に何倍ものトークンを使うので、単価の下がり方より、使う量の増え方が大きくなります。
浮いた分は、高いモデルと重い仕事に回っている
5倍超は、300を超える入力を使うGartnerの計量モデルによる予測で、報道は、企業の実際の請求がどれだけ増えたかは伝えていません。ジェボンズのパラドックスにも触れていません。
そのうえで記事の2つの要因に照らすと、トークンが安くなって浮いた分は、開発各社では高い次のモデルに、使う企業では重い仕事に回っていると考えます。単価の値下がりは、そのままでは節約にならず、使う量を増やす元手になります。
AIの費用を、単価ではなく片付いた仕事1件で測る
記事は対策に、成果の物差しを決めて費用と並べることや、決まった仕事を安いモデルへ自動で回すことを挙げています。私の会社も、このサイトのニュース配信で、新着を点数で絞る仕分けの役はHaiku、要約を書く役と確かめる役はOpusと、モデルを分けています。
効率を上げるだけでは、使う量が増えます。任せている仕事ごとに、次の順で決めます。
- AIの月の費用を、片付いた仕事の件数で割る
- エージェントに替えた仕事は、替える前の月と並べる
- 件数の伸びが費用の伸びより大きければ、続ける
- 小さければ、決まった仕事を安いモデルに戻す
- 使う量に上限を置き、超えたら止める
読み解きに使った概念・法則
ジェボンズのパラドックス
資源を効率よく使える技術が出て、1回あたりに使う量が減ると、資源を使う総量はかえって増えることがある、という考え方。
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