IT部門でAIを試しても、期待ほどの成果が出ないことがあります。Computerworldの記事は、多くの組織で原因は技術ではなく、ばらばらのデータにあると指摘しました。同じ組織の機器の台数も仕組みごとに違い、慣れた担当者が、どの仕組みを信じればよいかを覚えて補ってきました。

この記事の要点

  • 機器の台数が、仕組みごとに9,400台・8,700台・10,200台と違う
  • 慣れた担当者が補ってきた食い違いが、AIの答えにそのまま出る
  • AIに渡す前に、人がどこを補っているかを聞いて直す

人が補ってきた台数の食い違いは、AIの答えに出る。3つの仕組みが数えた機器の台数(9,400台・8,700台・10,200台)は食い違う。慣れた担当者は信じる仕組みを選んで残りを記憶で補うが、AIは担当者を通らずにデータを読み、食い違いが答えに出る図。台数はComputerworld(2026年10月20日)の記事が挙げた例です。担当者とAIの線と答えの四角は、記事の説明をもとに描いた概念図で、実際に数え違えた件数は伝えられていません。

同じ組織の機器の台数が、3つの仕組みで食い違っている

Computerworldの記事によると、IT運用でAIを試して期待を下回ると、まず技術が疑われます。ところが多くの組織で、原因は2年間照合していない構成管理の台帳(CMDB)や、表計算ソフトの資産のデータにあります。

記事は、AIはこうした問題を作らず、すぐに、人目につく形で表に出すと書いています。IT環境の多くは道具を1つずつ足して育ち、互いにデータを分け合うように作られたものはほとんどありません。機器の台数は、仕組みごとに次のように違います。

仕組み 台数
端末の管理の道具 9,400台
セキュリティの検査の道具 8,700台
構成管理の台帳(CMDB) 10,200台(使い終えた数百台を含む)

人はこの食い違いをよけることを覚え、慣れた担当者は、どの問いにどの仕組みを信じるかを知っていて、残りを記憶で埋めます。その知恵は貴重ですが、AIには見えません。

AIが食い違いに出会うと、答えにもそれが出ます。重要な更新が抜けたノートパソコンの一覧をAIに頼むと、端末の管理と検査の道具で機器の名前が違えば、一部を2回数え、ほかをまったく拾わないことがあります。

食い違いは前からあったのに、なぜAIを入れると表に出るのか

コピー機の紙詰まりを、近くの席の人がいつも直している職場では、修理は頼まれません。その人が帰ったあと、自動で流した印刷が止まって、初めて修理の話になります。

同じデータを読んでいるのに、なぜAIを入れると、すぐに食い違いが表に出るのか。

慣れた人が補う間は、データの食い違いは悪い結果にならない

穴のあいた守りの薄切りが何枚も並び、穴が一列にそろった線だけが事故まで届く絵
スイスチーズモデルのイメージ

説明したいのは、前からあった食い違いが、なぜAIで初めて問題になるのかです。James Reasonのスイスチーズモデルは、事故を防ぐ守りを、穴のあいたチーズの薄切りを何枚も重ねたものに見立てます。

1枚に穴があってもふつう悪い結果にはならず、穴が一列にそろったときに通り抜けます。Reasonは、設計や管理の判断が残す弱さは長く気づかれないことがあり、悪い結果の前に見つけて直せるとしました。

このニュースでは、機器を数える道具が1枚目の守りで、名前や台数の食い違いがその穴です。どの仕組みを信じるかを知る担当者は2枚目の守りで、担当者が補う間、食い違いは悪い結果にならず、照合されずに残ります。

AIは担当者の知恵を持たずにデータを読むので、答えはこの守りを通りません。

AIは担当者を通らずに、ばらばらのデータをそのまま読んでいる

記事は、台数がどの組織のものか、AIが実際にどれだけ数え違えたかを伝えていません。スイスチーズモデルに照らすと、次の順で起きていると考えます。

  1. 部署ごとに道具を入れ、数え方がそろわない
  2. 慣れた担当者が、どれを信じるかを覚えて補う
  3. 仕事は進むので、食い違いは照合されずに残る
  4. AIは担当者を通らずに読み、答えに食い違いが出る

AIが失敗を作ったのではなく、担当者が補ってきた食い違いが表に出ています。

AIに渡す前に、慣れた人がどこを補っているかを聞く

記事は、AIに任せる仕事を1つ選び、使うデータの出どころをすべてたどるよう勧めています。顧客の一覧や在庫の表が2か所以上にあるなら、人がどこで補っているかも見ます。

  1. 任せる仕事を1つ選び、読むデータの置き場を並べる
  2. 置き場ごとに、慣れた人にどれを信じて何を補うかを聞く
  3. 補っていなければ、そのままAIに渡す
  4. 補っていれば、渡す前にデータを直すか、正とする置き場を決める
  5. AIが食い違いを見つけたら、直すか残すかを人が決める

私の会社でも10月19日、機器の台帳に過去の機種を22件足す作業をAIに任せると、前からあった食い違いが2件見つかりました。1件は、前の世代のページを書き換えたときに古いまま残った欄で、直しました。もう1件は確かめきれず、直さないと決めています。

読み解きに使った概念・法則

この記事の中心となる概念・法則

スイスチーズモデル

事故を防ぐ守りを、穴のあいたスイスチーズの薄切りを何枚も重ねたものに見立てる考え方。

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なべ

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なべ

テクノロジーは好きですが、そのものを作る側ではありません。かといって、新しい道具を集めて満足するほうでもない。

何か新しいものが出てきたとき、私が考えるのは「これで何ができるか」より「今のやり方このままでいいんだっけ」のほう。道具が増えるより、やり方ごと作り変えたり、無くしたりするほうが好きです。

AIが来て、人の考え方も、仕事の進め方も変わっています。その変わり方に興味があって自分の仕事で先に試しています。techtech.clubは、そのやってみた結果を置いておく場所です。

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