テック系の媒体The Vergeが、読者を増やす担当のチームを組み替えたと、Digidayが伝えました。検索からの訪問に頼れない時代への備えです。検索での露出や拡散で訪問を増やすことより、たまたま訪れた人を、メールマガジンや登録、有料の会員を通じて直接訪れる読者に変えることを目標にしています。

この記事の要点

  • The Vergeは何でもこなす担当をやめ、メールや分析の専門を置いた
  • 訪問に頼れない時代に備えるのに、チームは縮めず広げた
  • 追う数字が閲覧数から読者の段に変わり、段ごとに専門がいる
  • 目標を替えたら、段ごとに受け持ちと数字を決め、手前の段から持つ

追う数字を替えると、担当の分け方も替わる。目標が閲覧数のときは入口の訪問だけを数え、担当はひとまとまり。直接の読者に替えると段ごとに数え、担当がメール・プラットフォーム・分析に分かれる概念図。概念図です。Digiday(2026年10月19日)が伝えたThe Vergeの組み替えをもとに描きました。四角の数は担当の人数ではありません(人数は明かされていません)。

The Vergeは、何でもこなす担当をやめて専門に分けた

Digidayによると、The Vergeは、読者を増やす担当のチームを、たまたま訪れた人を直接訪れる常連の読者に変える仕事を軸に組み替えました。この2年で、何でもこなす役割をやめ、メールマガジン、プラットフォームでのやり取り、読者の分析などの専門の担当を置いています。

閲覧数を主な物差しにするのもやめ、担当ごとに伸びの目標を持たせています。組み替えはふつう人減らしにつながりますが、人減らしを伴ったUSA Todayと違い、The Vergeのチームはこの2年で広がったと、読者と購読の責任者Esther Cohen氏は話します。人数は明かしていません。

読者づくりを支援する会社を営むMelissa Chowning氏は、専門に分けるのは目標が変わったためとみます。担当がこれまで任されたのは届く範囲と閲覧数で、いまは訪れた人をメールマガジンや会員、購読で直接つながる人に変える仕事で、経路と段階ごとに深い専門の知識がいるといいます。

訪問に頼れない時代に備えるのに、なぜ人手を増やしたのか

検索からの訪問が先細るなら、担当は縮めるのが自然に見えます。ところがThe Vergeは、ふつうは人減らしにつながる組み替えで、チームを広げました。

訪問の数を追うのをやめたのに、なぜ人手は増えたのか。

戦略を替えた会社は、あとから組織の形を組み替える

黒い矢印の戦略が3つに分かれ、その下で組織の図も同じ形で3つに分かれる。組織の形が戦略に合わせて組み替わる見立ての絵
組織は戦略に従うのイメージ

説明したいのは、目標を替えたThe Vergeが、なぜ担当の分け方まで替えたのかです。経営史家のアルフレッド・チャンドラーは1962年の『Strategy and Structure』でデュポンなど4社の歴史を調べ、組織は戦略に従うと論じました。

量や地域を広げ、製品を増やす戦略を取った会社では、意思決定を分ける必要が生じ、事業部に判断を任せる形へ組み替わりました。大企業の話ですが、The Vergeでは、匿名の訪問者を登録した人、有料の会員へと進める目標が戦略に、専門の担当と担当ごとの目標が組織の形に当たります。

店に例えると、通りがかりの客を数えるうちは、呼び込みの係が何でも少しずつこなせば足ります。常連を増やすと決めると、会員の券を作る係や、来た回数を数える係が別にいります。

追う数字が読者の段ごとに分かれ、受け持ちも分かれた

報道は、The Vergeの検索からの訪問がどれだけ減ったかも、チームを広げた理由が段ごとの担当を置くためだったかも伝えていません。チャンドラーの考えとChowning氏の説明に照らすと、人手を増やしたのは、追う段と経路の数が増えたためだと考えます。

  1. 検索からの訪問に頼れなくなる
  2. 目標が、閲覧数から直接の読者に変わる
  3. 匿名・登録・有料の段ごとに、やることが分かれる
  4. 段と経路ごとに専門の知識が必要になり、担当が増える

閲覧数という1つの数字なら何でもこなす担当で追えますが、段が増えると同じ形では追いきれません。

目標を替えたら、段ごとに受け持ちと追う数字を決める

閲覧数のころの担当の形のまま目標だけを替えても、新しい段を受け持つ人がいません。会社のホームページを1人がブログもSNSも広告も少しずつ受け持っているなら、次の順で組み直します。

  1. 追っている数字を書き出す(閲覧数や訪問数だけなら、目標は前のまま)
  2. 初めて来る、登録する、頼むまでの段を並べる
  3. 段ごとに、受け持つ人と追う数字を1つずつ決める
  4. 人が足りなければ、全部を少しずつ持たず、手前の段から1つずつ持つ

私の会社でも先週、運営するメディアで、検索からの訪問は脇役にし、メールで直接届けられる読者の名簿を主役にすると決めました。最初に置いたのは、届ける中身より先に登録の枠です。登録する人がいなければ、送る意味が無いからです。

読み解きに使った概念・法則

この記事の中心となる概念・法則

組織は戦略に従う

会社の組織の形(誰が何を受け持ち、どこで判断するか)は、その会社の戦略に応じて作られる、という考え方。

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なべ

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なべ

テクノロジーは好きですが、そのものを作る側ではありません。かといって、新しい道具を集めて満足するほうでもない。

何か新しいものが出てきたとき、私が考えるのは「これで何ができるか」より「今のやり方このままでいいんだっけ」のほう。道具が増えるより、やり方ごと作り変えたり、無くしたりするほうが好きです。

AIが来て、人の考え方も、仕事の進め方も変わっています。その変わり方に興味があって自分の仕事で先に試しています。techtech.clubは、そのやってみた結果を置いておく場所です。

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