シフト表が紙で回ってきて、受け取った人が全員分カレンダーに打ち込む。

この転記作業を人間がやるのは、当たり前のようでいて、もう当たり前ではありません。読む、写す、入れる。この工程は機械のほうが速くて正確です。それでも人がやり続けているのは、できないからではなく、そういうものだと思っているからだと思います。

今回は、シフト表の写真1枚と指示1文をAIに渡して、カレンダーに予定が入るところまでを試しました。

中身は小さい話です。ただ、確かめたかったのは精度ではなく、「これはやるべき」と思い込んでいる作業が自分の中にどれだけ残っているかのほうでした。

この記事の要点

  • 予定の打ち直しは、誰の工数にも数えられていない二度手間
  • 媒体は紙のまま、読み取る側をAIに替えた
  • 写真1枚と指示1文。出てきた候補を承認するだけ
  • 仕組みは作っていない。標準の連携をそのまま使った
  • 問われているのは道具ではなく、「これは人」「これはAI」という線引き
「転記」はAIの仕事に。紙のシフト表を写真1枚でカレンダーへ登録する
やったことは、写真一枚とカレンダー入力への指示

紙の予定をカレンダーに写す非効率さ

介護系サービスを展開する企業で、約10名分のシフトが紙で回っているのを見ました。

作る側は月に一度まとめて書いて提出ですが、受け取った側は毎回、1件ずつパソコンで打ち直しています。同じことは、店舗、飲食、介護、整備でも起きていると思います。

紙に書いたことを、また打ち直す。買い物リストをスマホのアプリに入れ直すのと同じ二度手間で、誰の成果にもなっていません。

媒体を紙から変えるのは、現実的ではありません。紙がいちばん回しやすいから、現場は紙のままです。

これまでの正解は「回ってきた紙を、人が読んでカレンダーに入れる」ことでした。それを「媒体はそのままにして、読み取る側を替える」に変えると、転記という作業そのものが消えます。

写真1枚と、指示1文

シフト表の写真を撮って、Geminiに添付し、1文だけ添えました。

添付写真からGoogleカレンダーに9月の予定を入れてほしい。

「転記」はAIの仕事に。紙のシフト表を写真1枚でカレンダーへ登録する
紙のシフト表が、候補の一覧に変わる

勝手に登録されるのではなく、Geminiが候補を作って見せてくるので、内容を確認して承認します。承認した予定だけがカレンダーに入ります。

タイトルや入れるカレンダーも、自然言語で指定できます。「タイトルは、”開始時刻-終了時刻”にして」「カレンダーはBさんに設定すること」と書けば、担当者ごとのカレンダーに割り振れます。

フォーマットの読み取りはAIに任せます。LINEで「8/17、8/19、8/20」とだけ書かれたものも、紙の独自フォーマットも、正確に読み取りました。自社の様式で読めるかどうかは、1枚試すのが早いと思います。

「転記」はAIの仕事に。紙のシフト表を写真1枚でカレンダーへ登録する
「8/17、8/19、8/20」とだけ書かれたものでも、正確に読める

Geminiは無料プランで使えました。カレンダーとの連携は、初回に画面の案内に従ってオンにするだけです。

21件を読ませて、どこまで入ったか

試したのは2回、合わせて21件です。件数としては多くありませんが、その範囲でどうだったかを書きます。

  • 1回目:6件中6件が正確
  • 2回目:15件中15件が正確

今回は日付や時間のズレはありませんでしたが、予定のタイトルが「〇〇さん」ではなく、「シフト」で候補が出たので、「タイトルは、〇〇さんにしておいて」で全件の修正が完了。

登録前に候補一覧で出るので目視確認をして、指示をすれば修正は効きます。

「転記」はAIの仕事に。紙のシフト表を写真1枚でカレンダーへ登録する
15件の日付と時間。取り違えはゼロ

仕組みを作らない選択

同じことを自動化するなら、これまでGASとAPIを半日かけて自分で組むか、外部サービスを探すところでした。作ったあとは誰かが面倒を見続け、仕様が変われば直すのも自分です。

今回は何も作っていません。Geminiのカレンダー連携をそのまま使っただけです。作る時間も、壊れたときに直す責任も、最初からありません。

作らないこと自体が目的なのではありません。AIは指示で形を変えられるので、“仕組みに合わせて人間が動く”のではなく、“AIをこちらの現場に合わせさせる”という動きができます。形を固定せず、必要になったら変える。この柔軟さが、いまのAIを使うことの意味だと思っています。

試す前に知っておきたいこと

シフト表には、従業員の氏名が載っています。今回は氏名を伏せた状態で試しました。氏名の入った表をそのまま渡してよいかは、会社ごとに判断が違うところだと思います。

予定表は、誰がいつどこにいるかが分かる、会社の動きの縮図です。

「Geminiアプリ アクティビティ」がオンだと、チャットは既定で18か月保存され、モデルの学習に使われます。オフにすると学習には使われませんが、チャットは72時間アカウントに残り、人間のレビュアーが見ることはある、と案内されています。私はオフにしたうえで、不要な情報は写していません。

Google Workspaceのアカウントは、データの扱いも管理者の設定も個人アカウントとは別です。会社のアカウントで試すなら、そこは先に確認したほうがいいと思います。

ただの作業は、もう人間がやることではない

レシートの金額を家計簿に書き写す手間は、家計簿アプリで消えました。同じことが、いま起きています。取引先から来る日程表のPDF、イベントの案内画像、手書きのメモ。写す手間は、どの会社にも残っていると思います。

効いたのは、AIの性能ではありません。「どこまでが人のやる仕事か」という線引きのほうです。

エンジニアの世界では、この線引きが早くから動いていました。同じ手順を2回やるくらいなら、自分専用の自動化を書いてしまう。その中にいたので分かりますが、それができたのは、道具を自分で書ける人たちだったからです。

誰もがAIを手に持てるようになったいま、この線を引き直す仕事は、働くすべての人の側に移りました。

私はAIを、自分の部下だと思って使っています。何をさせるかを決めるのは、私たちの仕事です。

なべ

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なべ

テクノロジーは好きですが、そのものを作る側ではありません。かといって、新しい道具を集めて満足するほうでもない。

何か新しいものが出てきたとき、私が考えるのは「これで何ができるか」より「今のやり方このままでいいんだっけ」のほう。道具が増えるより、やり方ごと作り変えたり、無くしたりするほうが好きです。

AIが来て、人の考え方も、仕事の進め方も変わっています。その変わり方に興味があって自分の仕事で先に試しています。techtech.clubは、そのやってみた結果を置いておく場所です。

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