AI競争が「研究フェーズ」から「事業の再定義」に移った2025年以降、テック企業で共通する動きが起きている。

Workday、Google、NAVER、Digg、BenevolentAI——業種も規模も異なる5社で、創業者が経営の中枢に戻った。

ポール・グレアムが2024年に提唱した「ファウンダーモード」は概念ではなく、いま実際に企業が選択している経営モードになりつつある。

※ファウンダーモード:組織が拡大しても創業者が製品や組織の細部に直接介入し、迅速な意思決定と現場感の維持によって大企業病(官僚主義)を打破する手法

事実 何が起きたか

2024年後半から2026年初頭にかけて、Workday、Google、NAVER、Digg、BenevolentAIの5社で創業者がCEO・取締役会議長・Executive Chairmanなどの経営中枢ポジションに復帰、または実務レベルで深く再関与している。

読み解き なぜ重要か

この現象は創業者の卓越性ではなく、AI転換の不確実性が既存の意思決定構造では処理できない水準に達していることを示唆している。

影響 何が変わるか

AIが事業の前提を書き換える局面で、「プロ経営者による段階的改善」ではなく「創業者による再創業」が選択肢として浮上しており、企業のリーダーシップ選択の基準そのものが変わりつつある。

Overview

  • Workday共同創業者BhusriがCEO復帰、前CEOは退任した(2026年2月)。
  • Google共同創業者セルゲイ・ブリンがGemini開発に直接関与、引退撤回を公言した(2025年12月)。
  • NAVER創業者Leeが7年ぶりに取締役会議長復帰、ソブリンAI戦略を主導する(2025年3月)。
  • Digg創業者Roseが買い戻し、AI前提で再ローンチした(2026年1月)。
  • BenevolentAI創業者 Kenneth MulvanyがExecutive Chairmanに就任した(2024年10月)。

5社の創業者復帰を「ファウンダーモードの勝利」として読むのは簡単だが、構造を裏返すと別の問いが浮かぶ。

創業者がいなければAI転換の意思決定ができない組織とは何か。Workdayのアニール・ブースリは約1.39億ドルの報酬パッケージで呼び戻された。Googleのセルゲイ・ブリンは「引退していたら大きな間違いだった」と語った。これらは創業者の能力の証明であると同時に、プロ経営者の時代に築かれた意思決定プロセスがAIの速度と不確実性に対応できなかったことの証左でもある。

AIが事業の前提を書き換える局面は、ゼロからの判断、つまり「正解がまだ存在しない問い」の連続だ。その問いに既存のKPIや組織合意では答えられないとき、企業は創業者の「腹決め」に回帰する。

だが、それは属人的なリーダーシップへの依存でもある。

あなたの組織がAI転換に直面したとき、「創業者を呼び戻す」以外の選択肢を持っているかどうか——それ自体が、組織の成熟度を測る問いになる。

考える問い

  • あなたの組織で意思決定が停滞しているとき、そのボトルネックは「情報不足」か「決める人の不在」か、どちらだと感じるか
  • 創業者が戻ることで意思決定が加速するなら、それまでの経営チームは何を最適化していたのか

報道記事・ソース

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ジョン

techtech.club 編集長。メディアで起業し、元はスタートアップのプロダクトマネージャー。一度テクノロジーに賭けて挫折した。その経験がいまの生き方や考え方、事業の起点になっている。ここで書くのは答えではない。投資・キャリア・事業など専門家でなくても自分の頭で判断するための材料と視点。読者に教えるのではなく、一緒に考える側にいたい。