トランプ政権は連邦政府へのAI導入を加速させている。DOGEは2025年7月に連邦規制の半数をAIで廃止する計画を発表し、運輸省は12月にGoogle Workspaceを導入した。今回のProPublica報道は、その延長線上にある——ただし、「規制を廃止する」のではなく「規制を書く」という、より踏み込んだ領域への進出を示している。

事実 何が起きたか

米運輸省がGoogle Geminiを使用して連邦航空局(FAA)規則を含む安全規制の起草を計画しており、既に未公開のFAA規則がAIで起草されたと内部関係者が証言した

読み解き なぜ重要か

「Move fast and break things」の思想が、人命に直結する安全規制の領域に侵入し始めた

影響 何が変わるか

従来数ヶ月〜数年を要した規制策定が「アイデアから30日で完成」を目指す一方、航空機の安全基準、ガスパイプライン爆発防止、有害物質輸送ルールにハルシネーションが混入するリスクが指摘されている

Overview

  • 米運輸省(DOT)のグレッグ・ゼルツァン法務顧問は「我々は完璧な規則を必要としない。十分なものでいい」「ゾーンに氾濫させる」と発言し、規制の質より量を優先する姿勢を示した
  • プレゼンターは規制文書の80〜90%をGeminiが処理し、DOT職員は残りを担当すると説明したが、規制の前文は「ワードサラダ」に過ぎないとも述べた
  • DOTの元AI最高責任者代理マイク・ホートンは計画を「高校生インターンに規則策定をさせるようなもの」と批判した
  • トランプ政権下でDOTは約5万7,000人中4,000人近くを失い、弁護士100人以上が退職している
  • 政府効率化省(DOGE)は2025年7月に「DOGE AI Deregulation Decision Tool」を開発し、約20万件の規制のうち10万件の廃止を目指していた

注目すべきは「good enough(十分なもの)」という言葉だ。シリコンバレーでは、不完全なプロダクトを素早くリリースして改善する文化が成功の鍵とされてきた。しかし、航空機の安全基準や有害物質輸送ルールに「まあまあの品質」は許されない。一度ハルシネーションが規制に紛れ込めば、それを発見し修正するまでの間、人命がリスクにさらされる。これは単なる効率化の問題ではない。政府の基本機能——専門知識に基づく判断と説明責任——をAIに外注することの是非を問うている。DOTが「槍の先端」なら、その槍が最初に刺すのは規制の対象である市民かもしれない。

考える問い

  • AIが起草した規制にハルシネーションが含まれていた場合、その責任は誰が負うのか——AI、それを使った職員、それとも承認した政治任用者か

報道記事・ソース

公式発表・一次情報

政府の未来への推進力に: 米国運輸省が省全体の新たな協業基盤として Google Workspace を採用

ホワイトハウスAIアクションプラン

なべ

Author

なべ

techtech.club 編集長。メディアで起業し、元はスタートアップのプロダクトマネージャー。一度テクノロジーに賭けて挫折した。その経験がいまの生き方や考え方、事業の起点になっている。ここで書くのは答えではない。投資・キャリア・事業など専門家でなくても自分の頭で判断するための材料と視点。読者に教えるのではなく、一緒に考える側にいたい。