「先月の固定費、いくらでしたか」。すぐに答えられる経営者は、そう多くないと思います。私もそうでした。

請求はカードと口座とアプリにばらけ、頭の中とメモ帳に「だいたいこのくらい」がある。その「だいたい」が、実体と少しずつズレていきます。

少人数で経営していると、管理に回せる時間も人もないまま、このズレが静かに積もっていきます。

この記事は、その「やったつもり」「払ったつもり」のズレを、AIでどう潰したかの話です。書こうと思ったきっかけは自社サイトのちょっとした失敗でしたが、本題はもっと地味で、もっと応用が効くこと。

経営の「管理」を、頭やメモではなく、AIが読めるファイルに乗せ替えるという一手です。やりすぎて無駄になりやすい部分があるので、その線引きは最後にお伝えします。

この記事の要点

  • 経営者の痛みの本体は、金銭・管理・運用という3つのコスト
  • 資産(顧客・契約・スケジュール・入金)が増えるほど「やったつもり」と実体がズレる
  • 管理を頭やメモから、AIが読めるファイル(文章はMarkdown、表はCSV、データはJSON)に移す
  • ファイルはAIが読むためのもの。人間は開かず、AIに聞けばいい
  • 作り込みは痛みが出てから。先に作るとゴミになる

きっかけは「直したはず」が直っていなかったこと

AI秘書は「AIが読める情報」を作るところから。頭とメモの経営管理をやめる

自社で運営しているWebサイトで、リンク切れと、使えなくなった広告リンクを手動で直しました。作業を終え、記録にも「修正・公開完了」と書きました。ところが後日、AIに全ページを機械的に点検させたところ、ほぼ全ての記事に、つながらない広告リンクが生きたまま残っていたのです。

原因は単純でした。私は各記事の本文だけを直していて、全記事に自動で差し込まれる共通の部品を見落としていた。本文を直したことで「直したつもり」になっていたわけです。差し込み元の一箇所を直したら全記事が一斉に直り、AIの再点検で「残りゼロ」を確認できました。

これはWebの話に見えますが、本質はWebに限りません。「自分はやった」と思っていることと、実際に起きていることは、別物になりうる。そしてその差は、管理する対象が増えるほど広がります。

痛みを感じる3つのコスト

少人数の経営で効いてくるコストは、突き詰めると3つだと考えています。お金そのものの金銭コスト、何がどうなっているかを把握し続ける管理コスト、決まったことを回し続ける運用コスト。もちろん人材や機会損失などもあると思いますが、ここでは上記3つにフォーカスします。

このうち管理コストと運用コストは、見えにくいぶん厄介です。ズレが起きやすいのは、たとえば次のようなところ。

  • スケジュール
  • 入金管理
  • 顧客リスト
  • 営業の進捗

どれも「頭の中」「手書きのメモ」「それぞれのアプリ」に散っています。

散っているから、確認も点検もリマインドも、結局は自分の記憶頼みになる。社長が忙しいほどここが抜けていく。

先ほどの死んだ広告リンクのように、抜けた分が静かに損失になっていることもあります。

解決は「管理」をAIが読めるファイルに乗せること

AI秘書は「AIが読める情報」にすることから。頭とメモの経営管理をやめる

ここからが本題です。やったことを一言でいうと、「管理」を頭やメモから、AIが読めるファイルに移しただけです。

情報という資産を、AIが読み取れる電子ファイルにする。文章ならMarkdown、表ならCSV、データならJSONが扱いやすく、形式はこの3つでほぼ足ります。そしてこのファイルは、人間が眺めるためのものではありません。AIが読むためのものです。

作るときも、自分でゼロから整える必要はありません。AIに「この管理をするなら、どんな項目で持つのがいいか」と相談してフォーマットを決め、手元の情報を渡し、その形でファイルにしてもらう。これで土台はできあがります。

AI用と人間用で分ける。AI用はファイルそのものであり、人間用の人間が見やすいようにデザインを施したものです。

人間はファイルを開きません。AIに聞きます。面倒そうに見えるかもしれませんが、最初に器を決めてしまえば、日々やることは「貯める」と「聞く」の2つだけになります。

実例として、AIツールの費用を管理しています

私が実際に回しているものの一つが、契約しているAIツールの管理です。

ChatGPT、Claude、Geminiと、気づけば数が増え、月額と年額が入り混じり、「これ、まだ使っているか」が分からなくなる。サブスクの肥大化は、多くの経営者に覚えのある痛みだと思います。

そこで、ツールごとに費用、更新日、主な用途、今の使用感を一つのファイルにまとめ、AIに読ませています。私が向き合うのは、ファイルの中身ではなく、必要なときにAIへ投げる質問のほうです。

  • 今月のAI関連費用の合計は?
  • 来月に更新が来るのはどれか?
  • ほとんど使っていないのに払い続けているものはないか?

判断材料、つまり使用感と料金とこれまでの支払いが一つの場所に揃っているので、迷いが減ります。これは管理コストの削減であり、同時に金銭コストの削減でもあります。

以下の画像は、AIに「出費を整理して、簡潔に出して」と指示すると、月額と年額で固定費を出してくれます。月額と年額、ドル円換算、テーブル表示はAIが勝手に推測してやってくれており、まさに秘書そのものです(会話を何度も繰り返すことで学習してくれるAIもあります)。

AI秘書は「AIが読める情報」にすることから。頭とメモの経営管理をやめる
会話で固定費を確認

 

ここで一つ、信頼にかかわる話を付け加えます。

私はもう、こうした管理ファイルの中身を自分の目で追っていません。サイトのリンク管理表も、日々のタスクも、同じようにファイルにしてAIに読ませ、必要なことはAIに聞いて引き出しています。

さらに応用すると、このブログ記事の入稿も、WordPressの管理画面ではなくAIの環境から行っています。

仕組みのつなぎ方しだいでは、他のサービスの中に入っているデータすら、自分で画面を開かずに扱えます。ここは応用編なので深入りはしませんが、「ここまでできる」という射程だけ知っておいて損はありません。

ただし、いきなり作り込まないこと

ここまで読んで、「だったら見やすいダッシュボードを作ればいい」と感じた方もいると思います。

私もできますし、実際に一覧画面は持っています。ですが、それは多くの場合やりすぎになり、失敗します。私もそうでした。

作り込みに進むのは、「一覧でぱっと見たい」「社内の別の人にも見せたい」といった具体的な痛みが出てからで十分です。痛みが出る前に作った機能は、たいていゴミになります。

AIは頼めば何でもすぐ作ってしまう。だからこそ、こちらが線を引かないと、使われない作り物が量産されてしまう。

これは前回の記事「ボトルネックは社長。小さな会社をAIで「属人化しない経営」に変えた」でも触れた、私の中の鉄則です。アイデアは持っていていい。けれど作り始めるのは、痛みが出てから。小さく作って、小さく直して、必要になった分だけ大きくしていく。

今日できるのは、フォーマットを一つ決めることだけ

ではどう始めていけばいいのか。始め方は、拍子抜けするほど地味です。

管理したいものを一つ選び、AIと相談してフォーマットを決め、データを貯め始める。最初はこれだけで構いません。

  1. ChatGPTやClaudeなどのAIに相談をして、何を管理するのか、なぜ管理するのかの前提を議論する
  2. 前提に則って、必要な情報のフォーマットをAIと決める
  3. 前提とフォーマットが決まったら、情報を渡す(雑に渡してAIに整えさせればOK)
  4. AIサービス側でプロジェクトを作って、ファイルを格納する(これで記憶する)
  5. チャットベースでまずは使いはじめる

情報をAIが読める形にしておくと、AIは秘書にも作業者にもなります。溜まったファイルを読んで、抜けを見つけ、整理し、リマインドし、ときには削減の相談相手にもなる。最初の一歩に難しい設計は要りません。

難しさは、もっと複雑で大量の情報を読ませていったり、AIが記憶する情報を整えたりする基盤を作るその先のほうにあります。

将来かかるはずだった確認や探し物の時間を、先に潰しておく。そう考えると、今日フォーマットを一つ決めておくことは、地味なわりに割のいい投資だと思います。

なべ

Author

なべ

小さな会社の経営をAIで変える。自分で実践して、その渡り方を経営者の言葉に翻訳して届けます。やり方が変わる前に先に渡る人でありたい。起業7期目 / 元スタートアップPM